研究概要 |
ガン細胞は幹細胞同様の半永久的な自己複製能を有すると考えられている。しかしコロニー形成能実験から無制限の自己複製能を有するガン細胞は少数(〜数%)の細胞であることが示されている。加えて悪性腫瘍はその由来組織特有の分化マーカー陽性細胞と幹細胞マーカー陽性細胞を含むヘテロな細胞集団であることが多い。これらの事実は悪性腫瘍内に自己複製能および多分化能を有する少数の幹細胞様ガン細胞(ガン幹細胞)が存在することを示唆している。実際に白血病、乳がん、脳腫瘍など様々な悪性腫瘍およびガン細胞株から自己複製能、多分化能および腫瘍形成能を有するガン幹細胞が相次いで分離されている。同時に非ガン幹細胞は自己複製能に乏しく、腫瘍再生能力を殆ど有していないことも明らかにされた。これらの結果はガン幹細胞が腫瘍形成・維持に重要な働きを担っておりガン治療の真の標的であることを示唆している。本研究課題では既存のガン幹細胞濃縮方法を組み合わせグリオーマに存在するガン幹細胞の更なる濃縮(又は精製)を目的とし8種類のヒトグリオーマ細胞株についてSPの有無とCD133の発現を検討した。その結果4つの細胞株(Tp483,M059K,T98G,C6)にSPの存在を確認した。また検討した全ての細胞株にCD133陽性細胞(5〜35%)が存在することも確認した。現在CD133陽性SP、CD133陽性nonSP、CD133陰性SP、CD133陰性nonSPをFACSを用いて精製し生体内腫瘍形成能を検討中である。同時にガン幹細胞が濃縮されているC6SPとC6nonSPの遺伝子発現プロファイルを作製しSPで優位に発現されている遺伝子を検索した結果、Notchリガンド(deltaとJagged1)がSPで優位に発現されていることを見いだした。続いてSPとNotchシグナルの関係をガンマシクレターゼ阻害剤、活性型および抑制型Notch発現ベクターを用い検討し、NotchシグナルがSPに負に作用していることも見いだした。現在Notchシグナル阻害剤を用いて生体内腫瘍形成・再発について検討を行っている。
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