研究概要 |
本研究の目的は,癌特異的HOXコードの異常を引き起こす原因のひとつとしてマイクロRNA(miRNA)を証明することである.ヒトマイクロRNAのひとmiR-196a-1の二本鎖RNAを合成し,4種類のヒト細胞株に導入し,39個のHOX遺伝子の発現変化を定量的RT-PCR法で解析したところ,miR-196a-1はすべての細胞株のHOXA7の発現を低下させることがわかった.また,miR-196a-1の発現が高いヒト乳癌細胞はHOXA7の発現が低いことも明らかとなった.自由エネルギー最小化探索を利用したinsillco解析から,miR-196a-1によって認識される可能性が最も高いHOXA7のmRNA配列は,3'-UTRに5箇所存在することが予測された.そこで,5箇所のうちどれが最も重要であるのかを,ルシフェラーゼを利用したレポーターアッセイで解析した.その結果,5箇所いずれもmiR-196a-1の標的となること,さらに発現抑制効果は標的領域の数に依存して高くなることがわかった.miR-196a-1発現ベクターを作製し,miR-196a-1の発現が低いヒト乳癌細胞に過剰発現させ,細胞増殖性について検討した.miR-196a-1過剰発現細胞は,非発現細胞に比べ,足場非依存性の増殖能が高いことが明らかになった.現在,miR-196a-1過剰発現ヒト乳癌細胞のinvivoにおける増殖・転移性について調べている.以上の成果は,miR-196a-1はHOXA7の発現抑制を介して癌細胞の増殖を増強させることを示唆している.
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