研究概要 |
消化管特異的にephrin-A1を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製し、このマウスとApc^<min/+>マウスを交配して、腫瘍の数、大きさ、病理組織像に及ぼす影響を検討した。その結果、ephrin-A1の発現亢進によって、大腸で腫瘍の数の増加と大きさの増大ならびに小腸下部と大腸で浸潤像を伴った腫瘍の増加が見られた。組織学的に脱分化の進行を示す像はみられず、脱分化を伴わないで浸潤をおこすことが特徴であった(投稿中)。また、この研究の過程で、消化管粘膜においてephrin-A1は、内分泌上皮に特に強く発現していることを見いだした。今後、内分泌上皮の性質をもつカルチノイド腫瘍や内分泌細胞癌の病態におけるephrinシグナルの機能の検討が興味深いものと考えられた。 次に、TGF-βによって発現が誘導される標的遺伝子で、ヒトのがんで発現が亢進していることが報告されているTMEPAI(PMEPA1)について、この分子の機能を検討し、Smad2とSmad3に特異的に結合し、受容体キナーゼによるリン酸化と核への移行を抑制することでTGF-βシグナルに抑制的に作用する分子であることを示した(投稿中)。現在、TMEPAIのノックアウトマウスを作製しており、腫瘍の発生と進展における役割について検討する予定である。 TGF-βの標的遺伝子であるJunBの、角化細胞のがん化における作用を検討することを目的として、3次元培養を用いたin vitroのアッセイシステムで検討したところ、JunBは、ヒト角化細胞株HaCaTの増殖には必須ではないが、3次元培養時の重層構造の形成に必須であり、この際にaldoketoreductase, family 1, B10, selenoprotein P, SODなどの抗酸化物質の発現を誘導していることが示された(Ikebe et al, 2007)。
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