研究概要 |
[目的]本研究ではp53のユビキチンリガーゼとして報告されているPirh2の新たな機能を解明し、がん化との関連を明らかにする。これまでの我々の解析でPirh2のp53をユビキチン化する活性が低いことを示唆するデータが出ており、p53の分解以外のPirh2の標的及び機能解析を目指す。特に最近我々はPirh2の新たな標的として細胞周期抑制分子p27を同定しており、その詳細な分解機構、さらにPirh2の発現量制御機構を解析し、Pirh2が引き起こす細胞周期の撹乱とがん化との関連を解析する。 [研究成果]CDK阻害タンパク質p27の新たなE3リガーゼを同定するためp27のN末端をベイトにしてYeast two-hybrid法を行い、p27にPirh2が結合することを見いだした。Leng等はPirh2はMdm2やCOP1と同様にp53によって誘導され、かつp53のユビキチンリガーゼとして機能していると報告している(Cell 112,2003)。しかし我々の結果ではPirh2のp53に対するユビキチンリガーゼ活性は低く、Pirh2のsiRNAによるノックダウン実験の結果でもp53の量的制御におけるPirh2の寄与は予想以上に低いことがわかった。一方でHEK293および他の細胞にP27とPirh2cDNAをトランスフェクトすると、Pirh2によりp27のユビキチン化が促進されることを見いだした。さらにリコンビナントタンパクを用いた再構成系(in vitro)でPirh2がp27をユビキチン化することが検証された。Pirh2のsiRNAによるノックダウン実験の結果でもp27の明らかな蓄積が観察された。以上の結果よりPirh2はp27の新たなユビキチンリガーゼであることが強く示唆された。
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