本研究課題では、平成18年度に報告したp40TaxによるPTEN制御のメカニズムとSHIP-1発現制御における関与について解析を行った。 p40TaxはNF-κB経路の活性化に関与することが知られているため、NF-κB-binding motifを有するレポーターアッセイ系を構築し、p40TaxによりNF-κBが活性されることを明らかにした。また、抗NF-κB抗体によりNF-κBが活性化し、核内移行することも認めた。一方、p53経路について、p53活性が認められなかったため、NF-κB経路に着目して、解析を行った。 ATL患者ではPTENと共に、SHIP-1の発現低下が認められるため、p40TaxのSHIP-1に対する影響を解析したところ、PTEN同様にSHIP-1 mRNA、並びにタンパク質発現が抑制された。p40Taxの下流でNF-κBが活性化されることから、活性化NF-κBであるp65を発現させるとSHIP-1 mRNA発現を抑制した。 NF-κBは、転写補助因子であるp300と相互作用することが知れているため、PTENとSHIP-1の発現制御におけるp300の関与を解析した。p300を発現させると、PTENとSHIP-1の発現が増加し、NF-κBによるPTENとSHIP-1の発現抑制が抑えられた。さらに、免疫沈降によりNF-κBとp300は結合していることが明らかになった。 これらのことから、p40TaxはNF-κBを活性化させ、p300と結合することでPTNEとSHIP-1の発現を抑制するという新たな経路を明らかにした。以上の研究成果から、本研究課題は研究計画項目を達成すると共に、詳細な経路を明らかにすることができたため、現在、論文投稿の準備中である。
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