研究課題
大部分のがん細胞のミトコンドリアDNA(mtDNA)には、体細胞変異が蓄積している。発がん初期段階でmtDNAに変異が生じると変異mtDNAと正常mtDNAが混在した状態から、細胞内で変異mtDNAだけの状態に移行し、ついで変異mtDNAだけをもつ細胞のみの集団に移行する.本研究の目的は、(1)発がんにおける過程におけるmtDNA体細胞変異の蓄積の分子機構を明らかにする。(2)発がん時における変異mtDNAが原因のアポトーシス抑制機構を明らかにする。(3)ミトコンドリア機能が低下するにもかかわらず、細胞増殖が促進される機構を明らかにする。患者のがん組織のミトコンドリアDNAの全塩基配列を決定し、がん細胞と正常細胞のミトコンドリアDNAの配列の違いを比較し、抗癌剤耐性との相関関係を調べ、正の相関関係があることを明らかにした。また、抗癌剤耐性の細胞株のミトコンドリアDNA塩基配列を決定し、そのミトコンドリアDNAを別細胞に移植し、抗癌剤耐性が消失することから抗癌剤耐性はミトコンドリアDNAに存在することを明確にした。さらに抗癌剤耐性細胞を作り出し、その60%にはミトコンドリアDNAの変異が生じており、ミトコンドリアを移植する方法によって抗癌剤耐性が消失することから、これもミトコンドリアに抗癌剤耐性の原因があることを明確にした。抗癌剤はアポトーシスを誘導するので、ミトコンドリアDNAの変異によってアポトーシスが阻害され、がん細胞にミトコンドリアDNAの変異が蓄積することを明確にした。さらに、ミトコンドリア機能が低下することと相関していることを明らかにした。乳酸が上昇しているので、ミトコンドリア機能を代償するために解糖系が亢進していることを明らかにした。
すべて 2007 その他
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