研究概要 |
がんは、ウイルス感染、DNAの損傷、遺伝子発現制御の異常など種々の要因によって引き起こされる。また、生体防御機構は、発がんした細胞を排除すべく免疫監視に当たっており、その最前線に当たるNK細胞は、がん細胞の排除に深くかかわっている。しかしながら、がん細胞はImmuno-editingと呼ばれる、巧妙に生体防御系から逃れる術をもっていることが示唆されている。我々は、NK細胞の主たる機能を担っているNK活性化レセプターNKG2Dに着目し研究を進めてきた。興味深いことに、NKG2Dリガンドは、正常組織ではサイレントであり、発現がみとめられないが、がん細胞、特に悪性度の高い腫瘍には広範にかっ恒常的にNKG2Dリガンドの発現が認められることを報告してきた。すなわち、がん化、がんの悪性化に伴い、NKG2Dリガンドの遺伝子発現が誘導されると予測され、NKG2Dリガンドの遺伝子発現は、通常は厳格に制御されているものと推察できる。我々は、発がんによるNKG2Dリガンドの異常発現の分子機構を解明することを目的とし、研究を行った。 NKG2Dリガンドの転写制御機構を解明するため、我々は、プロモーターのクローニングおよびその解析を進めた。マウス肺がん細胞であるLL/2は、NKG2Dリガンド中でもRAE-1 delta, epsilonを強く発現していることが知られている。そこで、LL/2細胞のmRNAを調整し、5'RACE法によりRAE-1 delta, epsilonのmRNAの配列を決定した。その結果、NCBIで公開されているdatabaseでは報告されていなかった新規のexonが存在することが判明した。このmRNA情報をもとに転写開始点を決定し、その上流のプロモーターと思われる領域をクローニングしており、いくつかの転写制御領域と考えられる候補領域を見いだした。
|