研究課題/領域番号 |
18012058
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
鶴見 達也 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍ウイルス学部, 部長 (90172072)
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研究分担者 |
磯村 寛樹 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍ウイルス学部, 主任研究員 (20294415)
岩堀 聡子 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍ウイルス学部, リサーチレジデント (80416164)
中山 早苗 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍ウイルス学部, リサーチレジデント (80443456)
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キーワード | EBV / DNA損傷 / p53 / MCM複合体 / ミスマッチ修復 |
研究概要 |
EBV溶解感染を誘導すると宿主細胞内ではEBVゲノムは100倍から1000倍増幅複製される。このウイルスDNA合成を宿主細胞はDNA損傷即ち異常DNAとみなしATM依存的DNA損傷チェックポイント経路を活性化すること(Kudoh A et al..」.Biol.Chem.280:8156-8163.2005)、この現象は単純ヘルペスウイルス感染でも同じ現象がおきることを報告して来た(Shirata N, et al.J.Biol.Chem.280:30336-30341.2005)。しかし、このシグナルはp53の下流には伝達されない。このとき、p53とBZLF1蛋白質はEBV溶解感染細胞内で相互作用することが確認されることから、BZLF1蛋白質がp53から下流の伝達を抑制する役割を担っていることが考えられる。そこで、本研究ではBZLF1蛋白質がどのようなメカニズムでp53の機能を制御しているかを解析した。BZLF1蛋白質はp53のDNA結合能を大幅に上昇させること、さらにp53とTBPのp21プロモーター上への結合をも増加させるということがゲルシフトアッセイにより明らかとなった。またin vitro transcriptionによりBZLF1はp53による転写を増強させることがわかった。しかし、BZLF1はin vivoではp53特異的なレポーター遺伝子の発現を大幅に抑制した。驚くべきことに、このとき、p53の発現はBZLF1の量依存的に減少しており、この減少はプロテアゾーム阻害剤,MG132の添加により回復した。したがって、BZLF1蛋白質は溶解感染時にp53をプロテアゾーム依存的に分解し、下流の遺伝子発現を抑制することで、EBVの複製に適したS期様の細胞環境を整えていることが示唆された。これらは、溶解感染誘導時のp53の下流に存在するp21やMDM2の発現パターンとよく一致した。今後は、今回明らかとなったp53のproteasome依存的分解のメカニズムを新規E3 ligaseの同定も視野に入れ、詳細に検討していく予定である。以上、ウイルスBZLF1蛋白質がp53の機能をブロックすることで細胞周期停止や細胞死の誘導をおさえていること、またその分子機構はBZLF1蛋白質存在下ではp53はプロテアソーム依存的に分解されるのでp53の下流にシグナルが伝達されないことを明らかにした(投稿中)。
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