研究概要 |
【目的】CRKはSH2/SH3領域からなるアダプター分子であり、チロシンキナーゼから低分子量G蛋白を結ぶシグナルを伝達することが明らかとなっている。また、CRKは近年ヒトの悪性腫瘍においてその発現が増加していることが報告されており、癌の浸潤、転移に関与すると推測される。本研究ではCRKのシグナル伝達系の中で、特に細胞骨格の動きや細胞運動の制御に着目し、ヒト癌細胞の接着、浸潤におけるCRKの役割を明らかにすることを目的とした。 【研究成果】本年度は、卵巣癌(MCAS)、肉腫細胞株(Fuji, HS-SY-II, SYO-1)を用いてCRKをsiRNAで恒常的にノックダウンした細胞株を樹立した。4つの細胞株の何れにおいても、CRKIは完全に検出できず、CRKII発現が様々なレベルで減少した細胞株を3つ以上得ることが出来た。樹立細胞では細胞接着斑の数が減少し、アクチンストレスファイバーの形成も減少し、wound healing assayによる細胞運動能、colony形成能、in vivoでの造腫瘍能が低下することが判明した(Linghu, H.,et al.,Oncogene,25,2006;Watanabe, T.,et al.,Mol.Cancer Res.,7,2006)。またCRKの下流のシグナル伝達系の解析を行い、Dock180結合蛋白Elmo1がDock180のユビキチン化を制御することを見出し、局所でのRacの活性に関与することが示された(Makino, Y.,et al.,JCS,119,2006)。これらの結果から少なくともCRKは細胞株においては癌の悪性化に重要な働きをすることが示された。
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