研究課題
本研究ではアダプター分子Crkの癌化における役割を解析し、癌腫、肉腫、脳腫瘍など様々なヒト癌細胞株を用いてsiRNA法にてCrk knockdown細胞株を樹立した。何れの種類のCrk knockdown細胞においても、接着能、浸潤能、足場非依存性増殖能、in vivo造腫瘍能など、癌細胞の悪性化を示す指標に、著明な減少がみられ、Crkはヒト卵巣癌、軟部肉腫、脳腫瘍において、悪性化に必須の分子であることが明かとなった(Oncogene,25, 2006:M01. Cancer Res.,7, 2006)。また、Crkの癌化におけるシグナル伝達メカニズムを詳細に解析するために、NMRを用いた構造解析を行ったところ、Crk-Iはflexibleな分子で恒常的にシグナル標的分子と結合しているが、Crk-IIは、Grb2などのアダプタ一分子とは異なり、3つのSH領域がコンパクトな構造をとっており、この構造が2つのSH3領域の間にある15アミノ酸によって制御されることが判明し、この領域をISC (inter SH3 core)と命名した。ISCの変異体は、標的分子への親和性が回復し、また、細胞増殖能もCrk-Iと同様のレベルまで増加した。したがって、Crk-IIのcompactなstructureがシグナルの制御に関与することが判明した(Nature Struct. Mol. Biol.,2007, (In press)。今後は本研究で明らかにされた構造に基づきCrkのシグナル伝達を抑制する薬剤開発を目指す。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件)
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