ユビキチンリガーゼCdc4/Fbw7は、Notch、サイクリンE、c-Mycなど細胞増殖を促進する分子をユビキチン化するリガーゼであることが、試験管内の研究で明らかとなっている。また、様々ながんでCdc4/Fbw7の変異が報告されがん抑制遺伝子であると考えられる。すなわちCdc4/Fbw7の機能不全によりその基質分子が異常に蓄積し、そのために異常な細胞増殖、がん化を引き起こしていると考えられる。 そこでわれわれは、Cdc4/Fbw7のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、Cdc4/Fbw7の生物学的な機能、特に発がんに対する関与を調べた。 まず、胎仔線維芽細胞でCdc4/Fbw7遺伝子を欠失させた。すると予想に反して細胞の増殖が著しく抑制された。これは、細胞周期のG1期での停止とアポトーシスの増加によるものであった。その際に、タンパク質の発現量を調べてみると、Cdc4/Fbw7の基質と報告されているもののうち、Notch-1が異常な蓄積を示すものの、サイクリンEやc-Mycの蓄積は認められなかった。そこで、Notch-1が転写因子として機能する際の共役因子であるRBP-jとのダブルノックアウトを作製しNotch-1の過剰な機能発現をキャンセルすることを試みた。すると、Cdc4/Fbw7シングルノックアウトで観察された増殖抑制は解除された。このことから、Cdc4/Fbw7は胎仔線維芽細胞においては、Nocthのシグナル量を制御することによって適切な増殖能力を維持していること考えられた。
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