タンパク質リン酸化は細胞内シグナル伝達系の主要な反応機構であり、リン酸化タンパク質のプロファイルを網羅的に解析することで、細胞応答の動的変化を捉えることができる。しかし、細胞には非リン酸化タンパク質が多量に存在することから、2次元ゲル電気えいどう法により、リン酸化タンパク質を解析するためには、あらかじめリン酸化タンパク質を濃縮・精製する必要がある。そこで金属キレート親和性クロマトグラフィーを利用し、リン酸化タンパク質精製の至適条件を決定した。その結果、リン酸化型ERKの比活性が約10倍上昇した。この分画法と2次元ゲル電気泳動を組み合わせることにより、Aktキナーゼの新規基質としてAbi-1を同定することができた。また、新規ERK基質の網羅的検索も行い、アクチン線維良化タンパク質EPLILN、細胞質ダイニンの中間鎖、核膜孔タンパク質Nup50などを同定した。またこれらの基質のERKによるリン酸化部位を質量分析法により決定した。 EPLINについてはさらにERKによるリン酸化がアクチン線維結合活性におよぼす影響について検討し、C末端側のリン酸化によりアクチン線維結合活性が低下すること、ERKによるEPLINリン酸化が細胞運動およびラメリポディア形成に必須であることを示した。 ERKおよびp38 MAPキナーゼの核内基質を検索するため核分画、リン酸化タンパク質精製、2次元ゲル電気泳動を組み合わせることで、lamin A/C、Nup50などの核内基質が同定した。また核分画、リン酸化タンパク質精製を同様に行った試料についてLC-MS法による分析を行ったところ、c-Etsなどの転写因子のリン酸化が測定可能となった。
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