研究課題
われわれは、造血系転写因子AML1の機能欠失が造血幹細胞活性を亢進させ、白血病幹細胞の発生・維持に関与するという仮説を提唱した。これを検証する目的で、誘導的AML1欠失マウスから骨髄細胞を採取し、限界希釈法により長期骨髄再構築能を持つ造血幹細胞(LT-HSC)を定量した。移植4ヶ月後の骨髄造血再構築能を持っAML1欠失骨髄中のLT-HSCは対照の約9〜10倍と増加していた。また、フローサイトメトリーを用いた解析では、AML1欠失骨髄中にはSide population (SP)細胞・細胞周期G0などの静止期造血幹細胞が増加していることが示された。AML1をレトロウイルスを用いて骨髄細胞に過剰に発現させるとその造血再構成能が低下することも明らかになり、AML1が造血再構築可能な造血幹細胞活性を抑制することが個体レベルで明らかになった。白血病においてAML1の機能欠失変異と共存する変異であるFLT3重複変異(FLT3-ITD)をAML1欠失骨髄に導入し、AML1の機能欠失による幹細胞活性の亢進がFLT3異常と協調して白血病を発症する可能性の検証を試みたが、この組み合わせにおいては骨髄細胞の形質転換が誘導されなかった。一方、(3;21)型染色体転座で形成されるキメラ遺伝子AML1-Evi-1は骨髄細胞を形質転換することが知られている。AML1-Evi-1はEvi-1の全長を含むと同時にAML1の機能を抑制することから、AML1の機能不全がEvi-1と協調して白血病をもたらす可能性が考えられた。AML1-Evi-1からEvi-1の各ドメインを欠く欠失変異体を骨髄細胞に導入する実験では骨髄細胞を形質転換することができず、このことから、AML1-Evi-1による造腫瘍活性にはEvi-1部分のすべてのドメインが必要であることが示された。
すべて 2007 2006 その他
すべて 雑誌論文 (6件)
Leukemia and Lymphoma 48
ページ: 418-420
Annals of Oncology 18
ページ: 364-349
American Journal of Hematology 82
ページ: 386-390
Journal of Hematology 84
ページ: 136-142
Blood 15
ページ: 3329-3334
American Journal of Hematology (in press)