Jab1(CSN5)は、様々ながん細胞で発現の亢進を認め、慢性骨髄性白血病(CML)では、Bcr-Ablの下流で機能する。Jab1は、c-Jun、p27、p53など、細胞内増殖シグナル経路にかかわる因子の安定性や活性を調節するが、生体内機能や発がん機構における具体的な役割については不明な点が多い。この点を詳細に解明するため、Jab1遺伝子改変マウスを解析した。Jab1を構成的に発現させたJab1トランスジェニックマウス(Jab1-Tg)は、生後6-9ヶ月で著明な末梢白血球数の増加を示し、ヒトCML様の病態を呈して死亡した。骨髄では、KSL細胞の著明な増加を観察し、Cdkインヒビターの細胞内局在変化や発現抑制による不活性化を認めた。一方、Jab1+/-マウス(Jab1-/-マウスは胎生致死のため生存せず)では、骨髄は低形成性でありKSL細胞の減少を認め、Jab1-Tgマウスと正反対の病態を呈した。さらに、5-FU静注によりJab1+/-マウスは骨髄不全死または野生型マウスに比べて著しい回復の遅延を示した。以上から、Jab1は、造血幹細胞の増殖・維持に重要な役割を担い、その調節異常が骨髄性増殖性疾患の一因となることを明らかにした。
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