研究課題/領域番号 |
18013035
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
許 南浩 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (70173573)
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研究分担者 |
宮崎 正博 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教授 (90116509)
阪口 政清 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (70379840)
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キーワード | S100C / A11 / ヒト表皮角化細胞 / 増殖制御 / Annexin A1 / EGF |
研究概要 |
我々はこれまでに、EF-hand型Ca結合タンパク質であるS100C/A11が、ヒト正常表皮角化細胞(NHK)において高CaとTGFβという増殖抑制因子の作用に必須のシグナル伝達因子として働くことを明らかにしてきた。一方、S100C/A11はAnnexin A1と結合すること、いろいろなヒトがんで発現が亢進すると報告されているが、上記の増殖制御機構からは説明できず、その原因や意義は不明であった。我々はこの点を詳細に検討し、以下の結果を得た。 1.S100C/A11はAnnexin A1と複合体を形成しphospholipase A2と結合してその活性を抑制した。その結果アラキドンカスケードが抑制されて細胞増殖が低下した。EGFという増殖刺激が入るとAnnexin A1のN-末が切断され、S100C/A11との結合の喪失とphospholipase A2活性抑制の解除が起こって細胞増殖が維持される。即ち、S100C/A11は、核移行によるp21(WAF1)誘導の他に、細胞増殖を抑制するもう一つの経路に関わることになる。 2.NHKの培養上清を検索し、S100C/A11が活発に分泌されることを見出した。分泌型S100C/A11の機能を解析するため組み換えタンパク質を作成してNHKに作用させたところ、予想に反して細胞増殖が促進された。この増殖促進は主にEGFの産生誘導によるものであった。その誘導機構を解析し、S100C/A11の受容体はReceptor for advanced glycation endoproducts (RAGE)であること、細胞内ではNFkBとAktの活性化、CREBのリン酸化を介してEGF遺伝子の転写が活性化されることが明らかになった。 以上、今年度の研究成果によって、S100C/A11が複数の増殖抑制経路および増殖促進経路に関与することが明らかになり、その機能的ハブとしての本態の解明に大きな展開が得られた。
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