本研究では1)SHD1結合分子の同定、2)遺伝子変異マウスを用いたSHD1の機能解析の二点を中心に行った。1)に関して、三種類の結合分子をプロテオミクスによって同定し、いずれも遺伝子共発現でSHD1との結合を証明しているが、二種類の既知分子に関してはこれまで中心体への局在は報告されていない。残りの新規分子THP1に関して解析を継続した。抗THP1抗体の作成に成功していないため、THP1が実際に中心体でSHD1と結合しているかに関してはまだ不明である。生体内におけるTHP1の機能を解析する目的でB細胞特異的THP1欠損マウスを作成して解析した。その結果末梢リンパ組織におけるB細胞数が激減し、FACS解析で成熟B細胞の割合が減少していた。脾臓のTHP1欠損B細胞を種々のマイトジェンで刺激して増殖能を調べたがコントロールと比べて著変はなく、細胞死によって成熟B細胞数が減少していることが示唆された。そこで、NIH3T3細胞にTHP1siRNAを導入し、48時間後に細胞周期を検討した。その結果、コントロールsiRNAを導入した細胞に比べて明らかにアポトーシスが増加していた。アポトーシス誘導の分子機構を明らかにするために、THP1siRNA導入細胞において発現変動がある遺伝子を探索したところ、Baxの転写誘導が起こっていた。THP1の発現は細胞の生存維持に重要であることが判明した。 2)に関してSHD1欠損マウスを作成して解析したが、これまでに顕著な表現系は得らなかった。そこで1ck-SHD1トランスジェニックマウスを作成後、Balb/cマウスにバッククロスし、中心体多重化から腫瘍発症に至るか、を解析した。しかし、このトランスジェニックマウスはT細胞分化に障害はなく、一年以上の経過観察でも明らかな腫瘍発症を認めなかった。
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