今回の我々の研究によりM-septinが傷害ミトコンドリアに対し特異的に封入体を形成すること、この封入体内では酸化反応が誘導されており、さらにユビキチン化タンパク質が蓄積していること、封入体はアグレソーム様に凝集することが明らかとなった。これらの結果はM-septinがミトコンドリアの選択的分解に関与することを示唆する。我々はさらにM-septin封入体がミトファジーによって分解されているかを調べるため、電子顕微鏡による解析を試みた。その結果、M-septin封入体の近傍に膜構造が認められなかったことからM-septin封入体のミトファジーによる分解を示すことはできなかった。加えて、オートファジーのマーカータンパク質であるLC3とM-septin封入体は共局在しないことが免疫細胞染色法により明らかとなった。これらのことから、現在我々はM-septinによる酸化反応の誘導、アグレソーム様に凝集するということに着目し、M-septin封入体と被酸化タンパク質を分解するプロテアーゼoxidized protein hydrolase (OPH)との関連を検討している。M-septinにより誘導された酸化反応はOPHにより変性タンパク質を分解させるためのシグナルではないかという仮説を立て、さらに次のような分解経路の存在を考えている。まず、M-septinが傷害ミトコンドリアを核とする封入体を形成する。そしてこの封入体内部では傷害ミトコンドリアが発生するROSを利用したタンパク質の酸化修飾が起こる。最後にOPHがこの酸化修飾を認識して傷害ミトコンドリアや変性タンパク質を分解する。このことを証明できればミトコンドリアの発生するROSを利用した新たなる分解経路の発見になる。
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