研究概要 |
大腸がんや腎がん、前立腺がんなどについて手術摘出標本を用いて、Real time PCRや酵素活性測定により、NEU3が異常に高発現していることを詳細に検証した。また、培養がん細胞やシアリダーゼ遺伝子改変動物(KOマウス、TGマウス)を材料として、NEU3発現の変化に伴う遺伝子や蛋白分子、酵素反応産物等の変化について、とくに、細胞死に伴う分子変化について、DNAや蛋白アレイ等を行い、蛋白化学的、糖化学的分析を行った。その結果、NEU3が細胞接着や浸潤・運動等のシグナリングについても制御しており、がんで活性化するFAK,Shc,integrin・4等のシグナル分子の活性化やIL-6シグナリングを促進し、がんの悪性形質を助長していることが明らかになった。また、NEU3はRasの活性化を促進すること、siRNAを導入すると、Rasの活性化を阻害し、がん細胞が特別の刺激もなく自ら細胞死に陥ること、正常細胞ではこの現象が見られないことがわかった。NEU3に依存したこの活性化は、EGFレセプターやsrcキナーゼ阻害剤の添加により、80%程度消失した。一方、酵素の触媒作用およびシグナル分子との相互作用というふたつの観点から、NEU3の細胞死に対する役割を検討した。その結果、NEU3によるEGFレセプターのリン酸化の促進は、反応産物であるラクトシルセラミドの蓄積によるのみではなく、NEU3膜結合ドメインとEGFレセプターとの結合によっても起こることが検証された。さらに、ヌードマウスに前立腺がんPC-3細胞を移植すると、NEU3siRNAの投与により、腫瘍の増大が有意に阻害されることがわかった
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