研究概要 |
がん疼痛を含む末梢神経障害疼痛の緩和は患者のQOLの改善に有用である。モルヒネを代表とするオピオイド類は強力な鎮痛効果をもち、がん疼痛患者の第一選択薬である。一方で嘔気・便秘・依存・耐性等の副作用が治療の大きな妨げとなっている。オピオイドの鎮痛効果や副作用には個人差が存在し、様々な遺伝子多型が関係していると考えられる。昨年に引き続き、我々はがん疼痛患者のオピオイド標的受容体であるμオピオイド受容体・δオピオイド受容体・κオピオイド受容体の解析を行い、各SNPのジェノタイプとオピオイド鎮痛効果・副作用との関連について検討した。 がん疼痛患者に対して嘔気等の副作用および痛みと改善率に対する主観的評価をおこない、μオピオイド受容体遺伝子のSNP(A118G, IVS2+691,IVS3+5953,IVS3+6151)を制限酵素断片長多型法(RFLP)にて、δオピオイド受容体遺伝子のSNP(IVS+18、Exon3+344)・κオピオイド受容体遺伝子のSNP(Exon1+411)はTaqMan assayにてタイピングを行った。各臨床評価項目と各SNPとに有意な関連があるかどうかを統計学的に解析を行ったところ、いくつかの臨床症状評価項目とSNPとに有意な関連をみとめた。 痛みに関しては、オピオイドμ受容体遺伝子のA118GとIVS3+6151およびオピオイドK受容体遺伝子のExon1+411で神経因性疼痛と有意な関連がみられた。これらの多型がオピオイドの鎮痛効果の個人差に関与している可能性が示唆された。一方で副作用に関してはオピオイドμ受容体遺伝子のIVS3+5953で眠気と有意な関連がみられ、δオピオイド受容体遺伝子に関してはもの忘れと有意な関連がみられた。これらの多型がオピオイドの副作用の個人差に関与している可能性が示唆された。
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