がん疼痛を含む末梢神経障害疼痛の緩和は患者のQOLの改善に有用である。モルヒネを代表とするオピオイド類は強力な鎮痛効果をもち、がん疼痛患者の第一選択薬である。一方で嘔気・便秘・依存・耐性等の副作用が治療の大きな妨げとなっている。オピオイドの鎮痛効果や副作用には個人差が存在し、様々な遺伝子多型が関係していると考えられる。副作用や鎮痛効果と遺伝子多型との関連を明らかにすることは、個々人にあったテーラーメイド医療の確立に役立つと考えられる。そこで、我々は本研究において、オピオイド投与中のがん疼痛患者を対象に、オピオイド標的受容体であるμオピオイド受容体遺伝子(OPRM1)・δオピオイド受容体遺伝子(OPRD1)・Kオピオイド受容体遺伝子(OPRK1)およびオピオイドの嘔気と関連のあるドーパミンD2受容体遺伝子(DRD2)の一塩基多型(singlenucleotide polymorphism:SNP)が、主観的な痛みの強さや、副作用の強さに影響するか検討した。その結果、オキシコドン投与群では、DRD2の多型で、食欲不振の強さと有意な関連を認めた。一方、モルヒネ投与群では、OPRD1の多型で、痛みの改善率と有意な関連があり、OPRKIの多型で、神経因性疼痛の強さ、BPIの平均値と有意な関連を認めた。
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