研究概要 |
・真のGISTの発生頻度を明らかにするため、胃癌にて切除された胃全摘出検体100症例を全割して標本を作製、一症例あたり標本を84-231個(平均130個)作成し、顕微鏡的なGISTの発生頻度を検索した。 結果)100症例中、35症例50病変の顕微鏡的GISTを見出した。GISTはいずれもKIT陽性で大きさは0.2-4mm(平均1.5mm)、一部のGISTにはc-kit遺伝子変異が見られた。.また、発生部位も臨床的GISTが見られる胃体部に集中しており、これら顕微鏡的なGISTは臨床的GISTの前駆病変であると考えられた。臨床的なGISTの発生頻度は10万人に1-2人とされており,我々が見出した顕微鏡的GISTの発生頻度はその数万倍であると考えられる。この顕微鏡的GISTの段階で、すでにc-kit遺伝子変異が生じていることより、当初の仮説通り、臨床的GISTにまで進展するにはc-kit遺伝子変異+他の遺伝子異常が必須であると考えられ、新たな治療のターゲットとして有望である。 ・顕微鏡的GISTから臨床的GISTに進展する遺伝子異常の探索 これまでのマイクロサテライトマーカーやCGHを用いた解析より、low-risk, high-riskのGISTに共通して1p, 14q, 22qの欠失が報告されている。この領域に顕微鏡的GISTから臨床的GISTに進展する原因遺伝子が存在している可能性が高いと考えられ、より小さなGIST(5mm-35mm大)における詳細な検索を行っている。1p, 14q, 22qに限定した超高密度のマイクロアレイを作成しCGH解析を行っているところである。最近、GISTにおける1p, 14q, 22qの欠失は独立したクラスターであるとする論文(Gunawan B et al.J Pathol 2007;211:463-470)が報告されているが,prellmlnaryな我々の解析結果では、5mm-30mm以下程度の小さなGISTにおいて、既に1p, 14q, 22qの一部に重複して欠失の見られることが明らかになっており、異なる結果である。さらに小さな顕微鏡的GIST病変について,whole genome amplificationの手法を用いたCGHを行い、目的の遺伝子を探索していく予定である。
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