研究概要 |
MYH修復遺伝子の、ハプロタイプ構築を14の1塩基多型(SNP)をもとにおこなった。さらに、その際、intron1にある新たな多型を発見した。これらをふくむ4つのSNPによるハプロタイプを用いると、あるハプロタイプで、800対の大腸がん症例対照研究で、リスクの有意な上昇をみた。 この、多型の、リスク増加の生物学的基礎を探るために、その部分(βタイプのプロモーターに相当)をふくむ、プロモーターアッセイ用のプラスミドを構築し、ルシラフェラーゼアッセイをおこなった。いくつかの細胞株で、差をみとめた。その過程で、さらに上流に、この多型とほとんどリンクするあらたな多型を見いだした。MYHのプロモーター領域であることを、ルシフェラーゼアッセイで確認し、この上流の新多型が、intron1にある多型と完全に連鎖不平衡にあることを、'全例のタイピングで確認した。この多型を外から導入した場合の多型による活性の差は、普通の条件下では検出できなかった。 さらに、喫煙に関連する、膀胱癌、肺癌について、それぞれ、100例、160例について頻度を調べた。膀胱癌のうち家族歴のある4例のうち3例で、以前報告したスプライシング異常をおこす変異があった。また、肺癌例で、変異型の頻度の上昇はみられなかったが、集団差が顕著であった。 その肺癌例の手術例について、PIK3CA, EGFR, K-RASの変異および増幅を検討し、genotypeとの相関をみた。そのなかでは、EGFRのイントロンの多型が、TKIの感受性に関与すること、あるいは腫瘍自体におけるEGFRの増幅との相関がみられた。さらにPIK3CAの増幅が変異よりも高頻度にみられ、とくにstage1,2で頻度は高く、変異とは重複していなかった。修復遺伝子の多型はこれらのmutation spectrumとは現時点では関係していないように思える。
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