研究概要 |
喫煙リスクの同定されている大腸癌、胃癌などで、喫煙歴を調整した症例対照DNA多型研究をおこなった。まず修復遺伝子MutYHのhaplotypeを構築し、約800対の中規模の相関関係研究で、大腸癌リスクを有意に上昇させるハプロタイプを見いだした。もっとも重要とおもわれる多型はプロモーター部位にみられた多型であったが、機能差を確認することはできなかった。 胃癌についても、喫煙歴と食事歴を調整可能な150-300例の症例対照相関研究をおこなった。ひとつは、inconsistentなdataが続いていた、CDH1promoterの多型であるが、ハプロタイプ構築の結果、日本人の胃癌への寄与が確認された。これで、北欧のdataとあわせて、2集団で確認されたことになるが、ともに症例数、寄与度とも少ない。胃癌発生背景粘膜の炎症の活動度を病理学的に評価して、炎症が少ない(これは酸化的DNA障害が比較的少ないのではないかと予想した)にもかかわらず、DNA付加体である、80H guanineが、上皮細胞、リンパ球などに強染し、多くのDNA障害が存在するという症例を、200例以上の胃癌手術例より抽出した。これちは、酸化的DNA障害修復遺伝子になんらかの機能低下をおこすような多型あるいは変異があるのではないかと期待した。 そこで、酸化的DNA障害修復遺伝子である、OGG1、MutYH、NTH1、MTH1の全エクソンの塩基配列を決め、異常な変異や多型が存在しないかどうか確認した。結果として、このような胃癌例に重大な結果を及ぼすような変異は見つからなかったが、いくつか、機能差の可能性のある多型候補が見いだされた。この点についてさらに検討を続けている。 家族集積性のある胃癌の例のなかから,あらたなP53多型を発見した。試験管内での検討では、明白な機能差がみられるのであるが、発見された例における発症は60代でありpopulation studyが必要と考えられた。
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