本研究においては、白血病の治癒を得るために、チロシンキナーゼ阻害剤を含む併用療法を分子基盤に基づき適切に選択する上でのサロゲートマーカーを確立することを目的として検討を行い、本年度は下記の結果を得た。 1.FLT3遺伝子変異、BCR/ABL変異、cKIT遺伝子変異を有し、STAT5のリン酸化がウエスタンブロットにより確認された白血病細胞株、並びに白血病臨床検体において、FLT3、ABL、cKIT阻害剤添加による細胞増殖抑制効果とフローサイトメーター(FCM)によるSTAT5のリン酸化状態の減弱は全ての阻害剤において相関した。また、FLT3、ABL、cKITの活性化状態が阻害されていてもSTAT5の脱リン酸化が認められないものについては、細胞増殖抑制効果は不充分であることが確認された。 2.新たに見いだしたcKITに選択性の高い阻害剤とcKITに対しては阻害活性が低いFLT3阻害剤の併用療法は、cKIT分子を高発現し、変異FLT3を有する白血病細胞に対して、単独での作用よりも少なくとも相加的に作用し、その増殖抑制効果とSTAT5のリン酸化状態が相関することが確認された。 3.変異FLT3発現細胞においては、NPM分子の存在が、FLT3阻害剤および従来の各種抗がん剤による増殖抑制効果を、軽度ではあるが阻害することが確認された。 4.変異FLT3発現細胞においては、LYNキナーゼやインテグリンファミリー分子の活性化が関与する知見がえられ、特にLYNキナーゼ阻害剤とFLT3阻害剤の併用効果が期待できる結果を得た。 5.急性骨髄性白血病細胞において、JunB遺伝子の発現量を定量化し、更に、遺伝子発現と遺伝子変異に基づく細分化を行っており、これに基づき、よりキナーゼ阻害剤の併用効果との関連性についての検討を進めている。
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