本研究では、がん遺伝子をターゲットとした簡便変異解析システムを開発することはもちろんのこと、本提案の分子システムが遺伝子多型解析法を一変させるオプティカルデバイスとして作用する日本発の遺伝子解析技術を世界に提供することを目指した。その成果として、(1)本研究の基礎になる塩基識別型蛍光性核酸塩基のライブラリーの作成を強力に押し進め、その結果として、微視的環境によって蛍光が変化する新しい蛍光色素を導入した蛍光性塩基を作成した。これを核酸塩基に導入して新しい塩基識別型蛍光性核酸を得た。この蛍光色素を使うことによって、透過率などの面で検出装置の簡素化できるだけでなく、2波長検出系での遺伝子多型解析システムの開発が期待できる。(2)塩基識別型蛍光性核酸塩基を含む核酸プローブの設計を指針化した。がん関連遺伝子BRCA1での変異やフィラデルフィア染色体遺伝子BCR/ABLなどのタイピングを行うためのプローブを設計し、それらの蛍光応答を確認した。(3)オーダーメイド医療のために必要な塩基識別型蛍光性核酸のアレイを作成した。今回作成した核酸プローブは、溶液中で混ぜるだけで配列を判別できる。私は、核酸プローブをチップ上に固定化し、アレイの作成を試みた。担体上で標的核酸をハイブリダイゼーションさせたときに蛍光強度が減少したものの、蛍光発光は確認された。
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