研究課題
HTLV-Iウイルス感染者は日本全体で100万人存在し、毎年約1,000人が成人性T細胞白血病(ATL)を発症している。一旦ATLを発症した場合その予後は1年に満たず極めて不良で、ATLに対する治療法開発はHTLV-Iが蔓延している唯一の先進国である日本の責務である。ATLは病気の発症、進行や、予後に宿主の複数の遺伝子の多型の関与が推測されてきたが、その遺伝因子は未だ不明である。そこで、詳細な臨床情報を伴うATLの患者、ウイルスキャリア非発症者のDNA検体を用いて、候補遺伝子アプローチによる疾患感受性遺伝子の同定を試み、以下に述べる結果を得た。当研究室で同定した免疫関連遺伝子約200個に存在するSNPにHapMap計画で得られた情報を加え、1536個のタグSNPを抽出し、Goldengate法によりマーカーパネルを作成した。相関解析は段階的におこなうこととし、まず患者96人、非発症者96人でタイピングを行った。タイピング結果をもとに個別SNPのアレル頻度で統計解析を行い、p値<0.001のマーカー5個(1.1x10-6から9.8x10-4)に加え、0.01を下回るマーカー47個に対応する遺伝子領域から網羅的に384個のマーカーを選択し、患者208検体、非発症者276検体を用いて2次スクリーニングを実施した。その結果p<0.01(p=0.003〜0.006)を示すSNPが存在する遺伝子が3個同定された。現在、有意差を示す多型を含むハプロタイプ解析を行っており、また細胞株を用いた実験を開始し、これら3個の遺伝子のATL発症における役割を解析中である。
すべて 2007
すべて 学会発表 (1件)