研究概要 |
末梢段階由来のリンパ球系腫瘍の一部だけが食物・ウイルスなどの原因で惹起され、これらを除いて、白血病・リンパ腫は、血球分化の未分化段階で初原的な遺伝子異常が起こり、電離放射線や数種の制癌剤を除けば、外因的な要因は全く存在しない。血球の増殖・分化の機構の内因的蘭隔により起こり、地球上の地域差も人種差も無い。しかし、遺伝子異常や形質の特徴で定義される白血病・リンパ腫の個々の病態には非均一性があり、その原因には、付加的遺伝子異常が推定される。 Flt3ITD遺伝子異常が、M3における形質の非均一性を説明する付加遺伝子異常であるのかどうかが今年度の課題である。25例のM3を検索した。9例がFlt3ITDを有し、9例がFlt3DS35の変異を有した。2例がITDとD835の両方を有した。9例のITD陽性例は、全例がCD2を発現した。CD2発現の内、1例だけがITD陰性であった。CD2及びCD34発現例は5例で総てITD陽性であった。ITD陽性例9例全例が、TdT (terminal deoxynucleotidyl transferase)(RT-PCR)を発現していた。これに対して、D835を示す例と示さない例との比較では、ITDの有無に観察された、CD2,CD34,TdT発現の対照性は見られなかった。以上の結果から、ITDとD835では、ITDだけが、M3細胞の未分化形質に関与していることが、示された。M3では、M3v (variant)との呼称が長く用いられて来た。しかし、CD2及ぶCD34両者発現例の2例は、必ずしもM3vとされる形態には厳密には合致せず、膜表面抗原,TdT発現,などで未分化形質を総合的に定義した方が、ITDの有無との相関も合理的に解釈できると思われた。
|