研究概要 |
1.CaA発現系の構築及びタンパク質精製 CagA分子EPIYA配列近傍の構造多型はピロリ菌の胃粘膜傷害活性と密接に関連する。そこで、EPIYA繰り返し構造が異なる複数のCagA発現系を構築し、これまで困難とされてきたCagA全長タンパク質(約140kDa)を異所性に可溶性タンパク質として大量発現させることに成功した。アフィニティクロマトグラフィー等により組換えCagAの精製を行い、銀染色ゲル上で単一バンドとして確認される精製CagA約200mgを得る事に成功した。 2.CaAタンパク質結晶化 精製CagAの高濃度溶液を用い、結晶化条件を検討した。個々のCagAに対して約1000種類の条件で結晶化を試行し、一つの条件下でタンパク質結晶様沈殿の形成が確認された。現在、結晶形成の再現性ならびにタンパク質結晶であることの確認を進めている。また、X線構造解析を進めるにあたり必要とされる数の結晶を得るため、ロボットによる結晶の大量調製を行っている。 3.構造解析 (1)NMR解析に用いるCagA分子内領域を決定するに当たり、プロテアーゼ分解法によりドメイン構造解析を行った。その結果、CagAはEPIYA繰り返し領域近傍で分子構造が二分されていることが明らかとなった。In vitro分子再構成系により、二分された個々のドメインは強力に分子内相互作用していることが示唆された。 (2)CagAは細胞内において多量体を形成する(Higashi, PNAS 2002)。種々の変異型CagA分子を用いCagA多量体形成に必要とされるCagA分子構造を明らかにした。CagAはSHP-2活性依存的に細胞運動及び細胞形態制御に影響を及ぼすが、その際CagA多量体化は必須であることを明らかにした。 これらの分子構造情報を基にNMR解析のためのCagA部分構造体の調製を行っている。
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