(1)作年度は基礎的研究において癌抗原とタイプ1型免疫を活性化するCpGを用いたCpG癌ワクチン治療法を確立した。そこで今年度はCpGとNY-ESO-1癌抗原タンパクを用いた臨床研究の開始を目標にした。北大病院にて倫理委員会の承認を得て、エンロールを開始したところ1症例のエンロールが得られヒトCpG癌ワクチン療法を実施することができた。ワクチン投与2回目の後、PBMCを用いてIFN-γのELISPOTassayを指標にヘルパーT細胞の免疫活性能を検討したところ、優位にNY-ESO-1ペプチドに反応しIFN-γを産生した。これらのことは臨床においてもCpG癌ワクチン治療法が有用である可能性を示している。今後さらにエンロールを重ねていく予定である。 (2)昨年度の基礎的研究でTh1細胞アジュバント治療法が、有用な抗腫瘍効果を示すことが明らかとなつた。このTh1細胞アジュバント治療の臨床への適応拡大を考慮し、今年度は放射線治療との併用治療を検討した。その結果、免疫治療、放射線治療のどちらにも耐性を示す上皮癌LLC-OVAは併用治療により拒絶することができ、さらに併用治療したときにのみ癌特異的CTLの誘導が相乗的に増強された。さらにこれらの癌特異的Th1細胞を用いた基礎的研究を臨床に応用するためヒト癌抗原Survivin、NY-ESO-1のHLAclassIIエピトープの同定に取り組んだ。両癌抗原プロテインを用いて癌抗原特異的Th1細胞を誘導することができ、それらTh1細胞を用いてSurvivinのHLA classII結合性ぺプチドと4種類の異なったHLA classIIに結合する、NY-ESO-1の15merペプチド領域を同定した。これらの発見はヒトのTh1細胞アジュバント治療を可能にするものと考えられた。
|