研究課題
リゾ脂質性分子であるリゾホスファチジン酸(LPA)は癌細胞運動を強力に促進する。一方、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)はLPAの細胞遊走活性を抑制する。また、β-アドレナリンアゴニストもLPA応答を抑制することを見いだした。本研究ではこれらの新しいLPA作用に対する抑制シグナル解析、さらに、我々の開発したLPA受容体アンタゴニストKi16425のインビボにおける作用解析を行った。その結果、インビトロ:(1)グリオーマ細胞においてS1PはS1P2受容体を介してLPAによる細胞遊走、浸潤を抑制する。S1P2受容体を介した抑制作用に関し特にRhoを介したRac経路に対する効果について解析した結果、LPAはRhoAを活性化しないが、S1P刺激はRhoAを活性化することが確認された。(2)また、ドミナントネガチブRhoA、G_<12/13>を介したシグナルを遮断するp115RhoGEFのRGS蛋白の過剰発現実験などから、S1P2受容体はG_<12/13>/RhoAを介してRacを抑制していることが示唆された。(3)複数のグリオーマ細胞でPTENの発現とS1Pの遊走抑制応答を解析したところ、PTENを発現しないU87MG、1321N1 astrocytomaでもS1Pによる著明な抑制が確認された。従って、最近報告されたS1P2作用にPTENが必須であるということはグリオーマに関してはあてはまらないと考えられた。(4)β-アゴニストもRacの抑制を伴い細胞遊走を抑制するが、この作用にはRhoAではなくcAMP/Rapの関与が示唆された。現在、詳細な解析をすすめている。これに関連してcAMPホスホジエステラーゼ阻害薬であるシロスタゾールも遊走を抑制した。インビボ:(5)膵臓がん細胞YAPC-PDをヌードマウス腹腔内に投与すると3〜4週間後に腹膜播種が観察される。Ki16425を投与すると生存が若干延びること、また、興味あることに肝臓への浸潤(あるいは転移)が明らかに抑制されることを観察している。しかし、生存には劇的な変化がないことからさらに実験条件を検討したい。今後、LPA受容体アンタゴニストに加え、S1P2受容体アゴニスト、cAMP関連薬のグリオーマ治療へ応用が期待される。
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