Aktは多くのがんで活性化していることが知られている。本研究課題では、新たなPDK1-Akt経路の活性制御機構を見いだし、新たながん治療法開発を行なうことを目的とした。 大腸菌を用いたtwo hybrid法により、Akt結合分子としてCKIP-1を、PDK1結合分子としてAki1を見いだした。CKIP-1は、Aktの膜移行に関わるPHドメインに結合しAktの活性を負に制御することで、in vivoにおけるがん細胞の増殖を抑制することを明らかにした。CKIP-1は自身のLZドメインを介して多量体を形成すること、その多量体化がAktの活性抑制に必須であることも明らかにした。また、CKIP-1発現量とAktの活性には負の相関があることも確認された。一方Aki1は、PDK1だけでなくAktとも結合することを見いだし、Aki1はPDK1-Aktシグナル伝達系の足場タンパク質として機能することにより、Akt活性を正に制御していることを見いだした。Aki1の発現をsiRNAで抑制すると、EGF依存的なAkt活性化を抑制したが、IGF-1依存的なAkt活性化は抑制されなかった。その原因を探索した結果、Aki1はEGFレセプターとも結合するがIGFレセプターとは結合しないことが明らかとなった。 以上の結果より、CKIP-1の発現を上昇させる薬剤をスクリーニングすることにより、新たなAkt経路阻害剤が開発できる可能性が示唆された。また、Aki1はインスリンレセプターやIGFレセプターを介したシグナルには影響を与えないため、Aki1を標的にした薬剤を開発することにより、高血糖などの副作用を回避した夢のAkt経路を阻害する抗がん剤となることが示唆された。
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