がんの転移抑制に関わると報告されたGPR54リカンドKisspeptin類の低分子化研究により見出された新規アゴニストTOM80とその関連誘導体に関わる定量的構造活性相関研究を実施し、TOM80上のN末端の安息香酸上の官能基の違いが、リガンドのアゴニスト活性に大きく関与していることを明らかにした。また、TOM80の生体内での安定性の向上や経口投与可能な薬剤への展開を目指して、非ペプチド化研究を実施した。Phe-Glyジペプチド部分に対して種々のペプチドミメティクスを導入した各種誘導体を合成し、GPR54アゴニスト活性を評価した結果、ペプチド結合をE型アルケンに置換した誘導体で活性の保持が認められたものの、予期に反してフルオロアルケン型等価体では殆ど活性が消失することが判明した。 一方、研究代表者らが見出した高活性CXCR4アンタゴニストFC131の詳細な構造活性相関研究を行い、FC131より1.3倍高い活性を有する誘導体FC122を見出した。FC122は、FC131にメチル基を導入し、構成アミノ酸の1残基に立体配置の異なるアミノ酸を変えた分子であり、FC131との構造の共通性から、低分子CXCR4アンタゴニストのデザインを行う上で有用な知見を与えた。また、すでに報告したuMオーダーで活性を示す二核亜鉛錯体構造を有する低分子CXCR4アンタゴニストについて、大量合成法を確立し、in vivo実験に必要な化合物量を確保した。 さらに、14残基からなる選択的CXCR4アンタゴニストT140を基本骨格とする、蛍光標識プローブのデザインを行った。すでに報告した111In放射標識T140誘導体のデザインコンセプトをもとに、ペプチドのN末端、および、Lys8のアミノ基を標識した分子を設計した。現在、化合物の合成を完了し、その生物活性の評価、および、プローブとしての機能評価を実施している
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