平成18年度に引き続き、選択的CXCR4アンタゴニストT140を基本骨格とする蛍光標識プローブの開発を行った。TZ14011のD-Lys8をFluorescein、AlexaFluro488で蛍光標識した誘導体は、親化合物の受容体に対する結合親和性を維持しているとともに、CXCR4受容体を発現する細胞株の細胞表面を有意に蛍光標識することが可能であることを明らかにした。また、本蛍光プローブは、共焦点レーザー顕微鏡での染色実験、フローサイトメーターでの細胞の分析・分画に利用可能であることが示唆された。 環状ペンタペプチドFC131をリードとしたCXCR4アンタゴニストの低分子化・非ペプチド化研究を行い、FC131のファルマコフォアを含むペプチドミメティクスが中程度の受容体結合阻害活性を示すことを明らかにした。また、環状ペプチドの中心骨格をいわゆる「ドラッグライク」な化学構造に置き換えた各種誘導体を合成・評価し、インドールを中心骨格とする新規低分子CXCR4アンタゴニストを見出した。いずれの誘導体もμMレベルでの活性値であることから、抗がん剤や腫瘍転移抑制剤としての応用のためにはさらなる高活性化が望まれるものの、構造展開を行う上でのリード化合物として適当な分子骨格の化合物を見出すことができた。 多因子疾患である癌および白血病に対する治療薬の開発、および、白血球細胞等の細胞分裂を解析するためのケミカルプローブの開発を目的として、細胞分裂のG2/M期において染色体の均等分配に関わるキネシンEg5に対して阻害活性を示す保護システイン誘導体の構造活性相関研究を行った。その結果、4-メトキシトリチルシステインが従来知られていたSTLCに比べて約10倍強力なEg5阻害活性を示すことを明らかにした。
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