研究概要 |
1.腫瘍抗原特異的T細胞のin vitroでの増殖誘導法の確立を目指して、新規の樹状細胞(DC)活性化因子thymic stromal lymphopoietin(TSLP)により活性化されたDC(TSLP-DC)によるT細胞の増殖誘導機構の解析を行い、マイクロアレイ解析からTSLP-DCでは共刺激分子であるOX40-LigandとOX40の発現がともに誘導されることを見いだした。TSLP-DCとT細胞との共培養系にその中和抗体を加えると、naiveなT細胞のみならず、メモリーT細胞の増殖誘導も阻害され、OX40-LigandとOX40の相互作用が、TSLP-DCによるT細胞の増殖誘導において重要であることが明らかとなった。 2.TSLP-DCはin vitroでの自家CD8T細胞との共培養にて、外来抗原がなくとも添加するDCの数依存的に自家CD8T細胞の増殖を誘導した。TSLP-DCとの共培養にて、セントラルメモリーCD8T細胞の増殖のみならず、NaiveなCD8T細胞も増殖し、セントラルメモリーT細胞に分化した。 3.CD8T細胞の増殖因子である、IL-7, IL-15を単独または同時にTSLP-DCと自家CD8T細胞の共培養に添加すると、増殖誘導が増強され、IL-7添加時のみセントラルメモリーCD8T細胞への分化誘導が促進された。 4.一方、TSLPとTLRリガンドにて刺激したDCは、IL-12のみならず、IL-23の発現が誘導された。この共刺激下では活性化DCによって、Th1型サイトカイン産生T細胞への分化誘導のみならず、IL-17産生T細胞への分化誘導もおこることが明らかとなった。 5.CMV既感染のHLA-A2402陽性ドナー血由来のDCにCMV特異的pp65ペプチドをパルスした場合、IL-7に加えTSLPを添加することで、従来の単球由来のDCと比較して、CMV特異的CD8T細胞の増殖を強く誘導でき、腫瘍抗原WT1ペプチドを用いた腫瘍抗原特異的CD8T細胞の増殖にも応用できる可能性が示唆された。
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