我々は、ヒト肝臓に対し極めて高い特異性及び感染性を有するB型肝炎ウイルス(HBV)の感染機構を担う外皮タンパク質を、組換え酵母で「バイオナノカプセル(BNC;HBV表面抗原粒子)」として大量生産し、BNC内部に遺伝子や薬剤を封入して、ヒト肝臓特異的で高効率な遺伝子・薬剤導入用ベクターとすることに成功した。これはウイルス法とリポソーム法の長所を併せ持つ新しい遺伝子及び薬物送達法である。既に我々は、(1)BNCの大量生産法、長期保存法、及びBNC内部への高効率な物質封入法、(2)肝癌移植ヌードマウスでのピンポイント遺伝子送達及びピンポイント抗癌剤送達による肝癌増殖抑制、(3)HBVエスケープ変異体を模倣した低抗原性BNC(ステルス型BNC)の開発、(4)サイトカイと又は抗体提示型BNCによるサイトカイン受容体又は抗原依存的再標的化、に成功した。今年度は(5)Homing Peptide提示型BNCに治療用遺伝子(HSV-tk)や抗癌剤(アドリアマイシン)を封入して、In Vivo (Xenograft)において尾静脈から投与して、ヒト大腸癌、ヒト肺癌、ヒト扁平上皮癌に対する治療効果を示すことに成功し、(6)癌特異的抗体及び癌特異的糖鎖認識レクチン提示型BNCに治療用遺伝子(HSV-tk)や抗癌剤(アドリアマイシン)を封入して、In Vivo(Xenograft)において尾静脈から投与して、前項と同じ治療効果を示すことに成功した。さらに、(7)Extruderを使用して上記BNCの粒子径を微調整することにより、In Vivo (Xenograft)における治療効果を最適化することに成功した。
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