研究概要 |
セマフォリンファミリーは神経ガイダンス因子として同定されてきた分子群であるが、近年血管新生、器官形成、癌抑制及び免疫応答への関与などへの多彩な作用が報告されている。本研究ではセマフォリンがその免疫増強活性とともに併せ持つ血管新生阻害作用に着目し、セマフォリンの作用メカニズムを受容体の同定も含めて明らかにするとともに、免疫増強による腫瘍拒絶と腫瘍血管形成阻害という両側面からのより効果的な癌治療法の確立を目指す。今年度の研究により、Sema4Aが血管内皮細胞に発現するPlexin-D1を介してVEGFにより誘導される血管新生に対して阻害作用を有することを明らかにした(EMBO J. in press)。実際、Sema4A欠損マウスでは網膜血管の再生過程が野生型マウスに比べ促進していることからもこの阻害作用がin vivoの系においても裏付けられた。またSema4AがCD8陽性T細胞とNK細胞の細胞障害活性増強作用を有することを示した。さらに、ヌードマウスへの腫瘍移植の系においてSema4A投与により腫瘍径を著明に縮小できることを示した。またSema6DやSema7Aなどのセマフォリン分子がそれぞれ受容体plexin-A1とVLA-1を介してT細胞やマクロファージの活性化など免疫増強作用を有することも明らかにしている(Nat Cell Biol. 8,615-622,2006)。
|