研究課題/領域番号 |
18015036
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
際田 弘志 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50120184)
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研究分担者 |
石田 竜弘 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (50325271)
佐塚 泰之 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (90162403)
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キーワード | がん / 新生血管 / DDS / リポソーム / モデル動物 / 体内動態制御 |
研究概要 |
末梢投与型DDS成功の鍵はその動態を最適化することにある。大変基本的な点であるが、この点を考慮していない研究例があまりにも多い。担がん動物の生理状態は正常状態とは異なり、この違いがリポソームの体内動態にも影響を与える可能性が高い。このような観点から、担がん動物におけるリポソーム自体、および封入薬物の動態について検討を行った。 結果、担がん動物において、腫瘍が増殖するにつれてリポソームの血中濃度、肝臓・脾臓への移行量が減少することが明らかになった。これはリポソームの一部が腫瘍へ移行したからであると考えられるが、その量だけでは減少量を説明することができず、担がん時においてリポソームの体内動態が大きく変わっている可能性が高い事が示唆された。 さらに、封入薬物の影響を見るために、抗がん剤(ドキソルビシン)を封入したリポソームを正常マウスに投与したところ、リポソームの血中濃度がドキソルビシンを封入していないリポソームのそれと比べて顕著に上昇し、一方で肝臓への移行量が減少することが明らかとなった。この原因を探るために、空のリポソームとドキソルビシンを混合して投与し、この際のリポソームの動態を検討したが、空のリポソームのそれとほとんど変わらなかった。この結果は、リポソームに封入されたドキソルビシンが、リポソーム投与直後からリポソームの肝移行性に影響を与え、結果としてドキソルビシン封入リポソームの血中濃度が上昇したものと考えられる。恐らくは、投与直後にマクロファージによってわずかに取り込まれたリポソームからドキソルビシンが放出され、これがマクロファージの取り込み能を速やかに低下させた結果、血中濃度が変化したものと考えられる。 現在、これらの基礎的な知見に基づき、病態に即した体内動態制御戦略に基づくDDSの開発に取り組んでいる。
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