研究概要 |
慢性炎症は発癌に関与することがあり、さらに一部では癌の悪性度を高めると考えられている。ごく最近頭頚部癌の癌幹細胞マーカーとしてCD133およびCD44が癌幹細胞マーカーであることが明らかになった。この癌幹細胞が炎症刺激に暴露される事で、より悪性度が高まるかいなかに関する報告や、炎症刺激を受ける癌幹細胞を制御する治療法に関する報告はない。癌幹細胞は発癌、転移形成、治療耐性獲得等に於いて重要であり、炎症刺激に対する様態を明らかにすることと治療法の確立は重要である。 他方、われわれは癌抑制遺伝子FHITを同定し炎症発癌・癌進展の中枢を担う分子prostaglandin E2(PGE2)を抑制し、抗腫瘍効果を発揮することをin vitroで示した。またEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(gefitinib)とCOX2阻害薬(celecoxib)との併用療法が有望な炎症発癌における消化器癌分子標的治療法として報告された(Dannenberg et al., J Clin Oncol 2005)。このような治療方法について解析を行う前の段階として、以下の点を今年度は明らかにした。 1)マウス食道に炎症刺激暴露したところ、FHIT KOマウスにおいて、PGE2産生量が多いことを、今回はin vivoで証明した。免染で詳しく検討したところ、基底層が増加していた。 2)Adeno-FHIT過剰発現状態では、PGE関連分子の低下を認め、アラキドン酸cascade周辺分子の変化を明らかにした。炎症は正常組織構築の中で相互作用として行われるものであるから、基底層増加の意義を明らかにするために、最近注目されている幹細胞マーカーを用いて腫瘍細胞を分画して調べた。 3)炎症刺激暴露時のFHIT KOマウスの食道上皮粘膜においてCD133/CD44細胞分画が増え、Chk1が発現増加蓄積し癌化することを明らかにした。
|