我々はこれまでに二官能性放射性薬剤の分子設計に基づき、腫瘍骨転移の内用放射線治療を目的に、^<186>Re-MAG3-HBPを開発し、その有用性を明らかとした。本薬剤を利用した内用放射線がん治療には、その体内動態をより厳密に制御する必要があると考え、^<186>Re-MAG3構造に基づく血清蛋白との結合が、血液からの放射能消失の遅延を来たし、不要な骨髄被ばくの要因になる可能性を考慮し、より蛋白結合性が低いと考えられる錯体構造の導入を検討した。そこで、6-hydrazino-pyridine-3-carboxylic acid(HYNIC)を配位子として用いることを計画し、tricine1分子とピリジン誘導体1分子をcoligandとして用いる数種の混合配位子錯体を設計し、^<186>Reと同属元素である^<99m>Tc標識体を作製した。これらのラット体内動態を検討した結果、tricine、3-acetylpyridine(AP)をcoligandとして用いた^<99m>Tc-(HYNIC-HBP)(tricine)(AP)(HYNIC体と略)において良好な結果が得られた。HYNIC体のインビボにおける蛋白結合率を評価したところ、その蛋白結合率は^<99m>Tc-MAG3-HBP(MAG3体)に比べ低い値を示した。またラット体内動態を検討したところ、HYNIC体は、MAG3体と同様、投与早期から骨への高い集積性を示し、MAG3体と比べ速い血液クリアランスを示した。その結果、HYNIC体は投与早期から有意に高い骨/血液放射能集積比を与えた。これらの結果は、^<186>Re-MAG3-HBPの血清蛋白結合性を低下させることにより、標的部位への集積性を損なうことなく、血液からの放射能消失を促進できる可能性を示すものであり、^<186>Re-MAG3-HBP投与時の体内放射能動態の制御に有用な知見を与えるものである。
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