研究概要 |
間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells;MSC)は成体骨髄に存在し,骨芽細胞,脂肪細胞,軟骨細胞等,多彩な細胞に分化できること,患者本人から細胞の調製が可能であり倫理的問題が少ないこと,細胞をinvitroで容易に増幅可能であることから,細胞治療や遺伝子治療への利用が期待されている。また,MSCは腫瘍組織への遊走能を有し,腫瘍間質細胞へと分化することが報告されている。即ち,MSCは本来的に腫瘍組織への集積性を示すことから,腫瘍へのターゲティングキャリアとして利用できると考えられる。そこで,B16BL6メラノーマ肺転移モデルに対し,サイトカイン遺伝子を導入したMSCを用いて腫瘍局所にサイトカインを産生させることで,治療効果が得られるか否かを検討した。本年度は以下の結果を得た(1)本実験で用いた初代培養マウス骨髄由来MSCが,脂肪細胞や骨芽細胞への分化能を有していることを確認した。(2)マウスMSCの腫瘍組織へのホーミング能の検証を目的に,初代培養MSCにGFPやルシフェラーゼ発現Adベクターを作用させることでGFPやルシフェラーゼ標識したMSCを調製した。B16メラノーマ肺転移モデルにおいて,これらMSCを全身投与し,腫瘍部位へのMSCの生着についてGFPやルシフェラーゼ発現を指標に組織学的に評価した。しかしながら,腫瘍部位におけるGFPやルシフェラーゼ発現はわずかであり,またコントロール群との有意差も認められず,MSCの腫瘍部位への正着量は極めて少ないことが判明した。(3)MSCへの遺伝子導入活性・転写活性・翻訳活性に優れたTNF-αやIL-12発現Adベクターを作製した。現在,これらのべクターをMSCに作用させ,このMSCを全身投与した場合の抗腫瘍効果について,B16メラノーマの肺転移モデルにおいて検討中である。
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