研究課題/領域番号 |
18015055
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研究機関 | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
研究代表者 |
堤 康央 独立行政法人医薬基盤研究所, 基盤的研究部, プロジェクトリーダー (50263306)
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研究分担者 |
角田 慎一 独立行政法人医薬基盤研究所, 基盤的研究部, 主任研究員 (90357533)
鎌田 春彦 独立行政法人医薬基盤研究所, 基盤的研究部, 主任研究員 (00324509)
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キーワード | ファージ表面提示法 / 腫瘍壊死因子 / 薬物送達法 / がん治療 / DDS / サイトカイン / 機能性人工蛋白質 / バイオコンジュゲーション |
研究概要 |
一般にTNFの2種類のレセプターのうち、TNFR1はTNFの抗腫瘍作用の発現に、TNFR2はTNFの副作用の発現に重要な役割を担っていることが報告されている。本観点から、平成17年度にまず、ファージ表面提示法を基盤とした独自の分子進化戦略により、野生型TNFと同等以上のTNFR1を介した生物活性を保持し、かつTNFR2には結合しないTNFR1指向性のTNF変異体の候補クローンを創出した。周知のようにTNFの抗腫瘍効果は、(1)直接的に腫瘍細胞にアポトーシスを誘導すること、(2)抗腫瘍免疫細胞を活性化すること、(3)腫瘍血管を効率よく傷害し、腫瘍血管の血管透過性の亢進や腫瘍の壊死を誘導することなどによって発揮される。従って本研究成果は近未来的に、TNFによる"がんに対する蛋白療法や遺伝子療法"、がんワクチン療法における"宿主抗腫瘍免疫応答のさらなる賦活化を目的としたTNF投与"、TNFの選択的ながん組織血管の透過性亢進作用を利用した"がん化学療法剤の腫瘍組織への効率的デリバリー"など、がん治療領域におけるTNFの可能性を大きく開拓するものと位置づけられる。本研究では、平成17年度までに作製した数多くのTNFR1指向性アゴニストのみならず、本年度に新たに作製したTNFR1指向性アゴニストの抗がん剤としての有用性を評価し、最も優れた医薬品シーズ候補を絞り込んだ。その結果、野生型TNFと同等以上のヒトTNF-R1を介した生物活性を保持し、かつ約500倍もTNF-R1指向性が増大したTNF-R1指向性スーパーアゴニストの作製に初めて成功し、安全かつ有効な抗癌剤、またTNFのバイオロジー解明に必須のツールとして期待された。またTNF-R1指向性構造変異TNFの機能情報や一次配列情報から、従来の活性-相関研究では認められなかった新しい知見が多数集積できた。
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