研究概要 |
分子動力学計算や実験データから背後に潜む多次元有効自由エネルギー地形を構成する手法の開発: 昨年度に引き続き、1分子時系列情報からガウス分布などの特定の分布関数の形を想定しないで"準安定状態"を構成し、自由エネルギー地形が正当化される時間スケールを同定しつつ、有効自由エネルギー地形を構成する方法論を開発・拡張した。準安定状態および遷移状態のあいだのエネルギー差を反映した自由エネルギー地形の樹形図を用いた可視化方法を考案した。また、複数の時定数が混在した生体分子ダイナミックスの各階層における軌道不安定性の性質を定量化する方法論を新規に開発した。 一分子時系列情報から背後に潜む状態空間の遷移ネットワーク構造を再構成する手法の開発: 昨年度に引き続き、局所平衡を予め規定しないで、異なる時空間スケールにおいて、時系列データの因果関係に基づいて状態および状態間遷移ネットワークを構成する方法論を開発した。ウェーブレット多重解像度解析と融合し、時間スケールの異なる複数の時系列情報のあいだの情報伝達、情報伝達の方向性、強さを移動エントロピー(Schreiber, Phys.Rev.Lett.85, 461(2000)を用いて定量化する方法論を考案した。具体的には、たんぱく質モデルの折れ畳み時系列に適用し、(1)平均的には、遅い時間スケールの状態空間から、速い時間スケールの状態空間への異方的な情報の流れが存在すること、(2)情報の流れは、軌道に沿って一様に起こるのではないこと、などを新規に見出した。
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