順遺伝学的解析に適した脊椎動物モデルとして確立されつつあり、かつ日本で古くから研究の先行しているメダカを用いて、脊椎動物に共通した獲得免疫系の中枢器官である胸腺の発生機序の解明を目指す研究を順遺伝学と逆遺伝学の組み合わせにより行った。 ゲノム網羅的スクリーニングで得られたメダカ胸腺発生異常変異体系統のうち4系統について、ポジショナルクローニングにより責任遺伝子を同定した。うち1系統については、責任遺伝子の機能解析を進めた結果、これまで哺乳類においても機能が知られていなかったWDR55が核小体でのrRNAの生合成と細胞周期を制御していること、またWDR55遺伝子欠損はゼブラフィッシュにおいてもメダカと同様に胸腺発生異常をもたらすこと、一方WDR55ノックアウトマウスは形態形成前に死ぬことを明らかにした(論文投稿中)。また、TILLING法により未熟リンパ球に特異的に発現するrag1遺伝子に点変異を持つ変異体系統を樹立し、表現型解析を開始した。 一方、我々が既に作製していた未熟リンパ球特異的にEGFPを発現するトランスジェニックメダカを用い、初めて胸腺内Tリンパ球の動態の生理的リアルタイム観察を行い、胸腺へ血管が伸長する以前のT前駆細胞の移入経路を明らかにするとともに、胸腺成熟段階ごとの胸腺内Tリンパ球の運動性の違いを明らかにした(J Immunol170;1605-15(2007)))。
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