研究概要 |
真核生物型の概日振動遺伝子ネットワークの再構成:遺伝子ネットワークの構造およびネットワーク構成因子の諸パラメータに関して振動発現への影響を調べた。その結果、ショウジョウバエの概日振動ネットワークなどで見つかっている、ポジティブおよびネガティブフィードバックループが連係したネットワーク構造が振動を生みやすいことがわかった。再構成で得られた振動は、2〜3時間程度の短周期振動であった。ネガティブ因子のタンパク質崩壊速度が速い場合(2時間)と遅い場合(16時間)の影響を比較したが、明瞭な差は見出せなかった。ネガティブ・ポジティブ両因子のタンパク質崩壊速度が近い場合に振動が形成されやすかった。ネガティブ因子のmRNAの崩壊速度に関しては、崩壊が早い場合に振動が形成されやすかった。再構成振動における周期の温度補償性について20℃と25℃で検討し、温度補償性が成立していることを示唆するデータを得たが、さらに慎重な検討を要する。 原核生物型の概日振動分子ネットワークの解明:in vitroのKaiCリン酸化振動における時計タンパク質問相互作用のkineticsを明らかにし(Mol.Cell, 2006)、さらに、時刻情報の転写リズムへの変換因子RpaAを同定および機能解析を行った(PNAS, 2006)。これを元に、大腸菌での概日振動の再構成を試み、部分的にリン酸化リズムを再現したが、再現性についての検討は今後の課題を要する。また、E-Cellをシミュレーターとして用いて、さまざまなkai遺伝子変異株や過剰発現株の複雑な表現型の多数を再現できる数理モデルを構築することが出来た(JBR, 2007)。
|