研究概要 |
ペプチド核酸(PNA)は,修飾したポリアミド骨格を持つ合成オリゴヌクレオチドである。配列特異的に2本鎖DNAと結合し,PNA_2/DNAの3本鎖を形成することが知られている。この性質を利用すると、プラスミドDNAへの結合に伴ってD-ループ構造が誘起されるので,転写誘導能を示すことも報告されている。PNAに光分解性保護基であるケージド化合物を組み合わせることによって,遺伝子の転写を光で制御する手法を開発することを目的にした。まず,ケージの導入によるPNAの相補鎖形成能への影響をPCR clampingを利用して確認した。次に哺乳動物培養細胞内で,光照射で遺伝子の発現を転写段階で調節できるかどうかを検討した。 3本鎖形成能を持っ16-mer PNA (H_2N-TTCTCTTCCTT CTCT-COOH)のN末から8番目のシトシンにBmcmoc基を導入し,Caged 16-mer PNAとした。Caged 16-mer PNAの相補鎖形成能は,Bmcmoc基の導入により失われたことをPCR clampingにより確認した。次に,プロモーターを持たないプラスミドベクター(pZsGreen)に16-mer PNAの結合領域を含む50bpのDNA断片を挿入し,D-loop形成による転写誘導を蛍光タンパク質の発現で観察できるベクターを構築した。これをHeLa細胞にトランスフェクトし,16-mer PNAあるいはCaged 16-merPNA存在下,紫外光照射の有無による転写誘導を観察した。その結果,16-mer PNAまたは光照射後のCaged 16-mer PNAを加えた細胞だけに,蛍光タンパク質の発現が観測された(Figure2)。以上より,Bmcmoc基で保護したケージドPNAを用いて,光照射によって遺伝子の転写を誘導できることが明らかになった。
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