本研究課題では、メダカをモデルに顔貌形質のゲノム関連領域を明らかにし、その形成に関与する分子的背景に迫ることを目的としている。過去の解析では顔貌形質のゲノム関連領域を同定できたものの、検出力がさほど高くないことが問題であった。そこで当該年度は、遺伝率がより高い状態で形質を定量化する方法の検討と、サンプルを倍に追加した雑系第二世代368個体による量的形質遺伝子座解析の実施を行った。メダカ頭部の画像データから抽出する特徴点およびその組み合わせを再検討した結果、過去の定量方法に比べて20%程度高い割合でゲノム関連領域を見出すことができた。この一連の解析を通じ、1)メダカにおいて顔貌形質の多様性に遺伝要因が絡むこと、2)メダカ近交系を用い、マウス等他のモデル動物に劣らない検出力にて量的形質遺伝子座解析を実施できることがわかった。また、サンプル数を184個体から368個体に増やすことにより、最大のLODスコアが6.2から7.9に上昇すること、さらにマッピングできた形質の割合も74.2%から90.7%へと改善されることがわかった。本研究は小型魚類であるメダカを世界で初めて量的形質の遺伝学的解析に用いている。従って、ここで得られた成果は複合形質の遺伝学的解析に対するメダカのポテンシャルを示しており、顔貌形質のように複雑な遺伝様式を示す形質の解析にメダカが有効であることを明示できたと考える。さらに、メダカの雑系第二世代を用いた時の検出力や必要なサンプル数など、量的形質遺伝子座解析を計画する際に参照するべき有用な情報も提供しており、基礎固めともいえる意義深い研究になったと言える。
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