研究概要 |
クロララクニオン藻のヌクレオモルフゲノムサイズの多様性の要因を明らかにするため、ヌクレオモルフDNA部分配列の比較解析を行なった。クロララクニオン藻2種(L.vacuolata、L.amoebiformis)ついて、PCR法により得たヌクレオモルフDNAの部分配列内にみつかった7遺伝子について、既知のB.natansの相同領域と比較した。その結果、イントロンの長さと数は、ゲノムサイズの違いにさほど影響しないと考えられた。一方、遺伝子間領域の長さはゲノムサイズの差を生む要因の一つである可能性が考えられた。さらに、ゲノム中の遺伝子のシンテニーを比較した結果、ヌクレオモルフゲノムの進化過程で染色体間や染色体内の組換えが頻繁に起こった可能性が考えられた。この結果を、全ゲノム配列の比較により検証するため,ゲノムライブラリー用のDNAの回収をおこなった。L.amoebiformisについて、パルスフィールド電気泳動によりDNAを分離し、ゲルからの精製によってヌクレオモルフ全DNA約500ngを取得した。そのDNAを支援班に送り、ライブラリー作成とドラフトシークエンスを委託した。 近年新たに確立されたクロララクニオン藻の培養株(P314株、P333株)について、パルスフィールドゲル電気泳動によりヌクレオモルフゲノムのサイズを推定した。その結果、P314株、P333株はそれぞれ、390kb、360kbであった。クロララクニオン藻のヌクレオモルフゲノムサイズはこれまで考えられいたものよりずっと多様であることが判明した。クロララクニオン藻のヌクレオモルフゲノムサイズの多様性については、カナダ・ダルハウジー大学のArchibald博士と共同で論文を投稿中である。 このような研究は他に例がなく、部分配列とはいえヌクレオモルフゲノム配列の進化学的考察を行なったことは画期的な成果といえる。
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