研究課題
ヒトの高次脳機能形成がどのような自然選択によって形作られたかを解明するために、グルタミン酸受容体遺伝子群について以下の分子進化学的解析を行った:1)グルタミン酸受容体遺伝子の上流調節領域の多型検索ヒト50検体とチンパンジー50検体を用いてGRIN1の上流領域3.2kbの全変異検出を行い、12個の挿入欠失変異を含む123カ所の変異を検出した。同様にGRIN2Aは0.8kb、GRIN2Bは3.0kb、GRIK1は3.9kb、GRIK4は1.0kbの解析を終えており、それぞれ40カ所、41カ所、107カ所、23箇所の変異を検出した。中立性の検定を行ったところ、GRIN2B上流領域においてヒト特異的にTajima's Dが有意に上昇する(+2.16)領域が見出され(転写開始点上流3.0kb付近)、この領域がヒト特異的平衡選択を受けている可能性が示唆された。2)GRIN2B上流領域に見られた多型の統合失調症との関連解析上の解析で観察されたTajima's Dの上昇の要因はこの領域に存在する2つのcommon SNPs(rs12368476と新規SNP)であった。これらのSNPsの統合失調症発症への関与を直接検討するために、統合失調症罹患群300検体と健常群300検体を用いた関連解析を行ったが、有意な関連は見出されなかった。3)グルタミン酸受容体遺伝子群におけるヒト特異的アミノ酸置換の同定前年度までに同定していた、グルタミン酸受容体全26遺伝子におけるヒト-チンパンジー間のアミノ酸置換74ケ所について、ゴリラ、オランウータンなどの他の霊長類8種の該当配列を決定した。その結果、チンパンジーとの分岐後ヒト系譜側でおきた塩基置換を41個同定した。さらにそれらを世界各地の7集団からなるヒト80検体でタイピングし、そのうちの34個がヒトで固定していることを確認した(論文準備中)。
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