研究概要 |
(1)コムギESTの大量解析:昨年度までに、約63万のESTシークエンスを得た。これらのEST contigは、コムギの遺伝子総数の90%以上をカバーしていると見積もっている。今年度はさらに、ホウ素処理をしたコムギ系統から、約4万シークエンスを得た。 (2)生殖成長関連遺伝子(MADSボックス遺伝子)のクローニングと発現析:クラスBCD MADS-box遺伝子の同祖遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイムPCR解析の結果、発現する同祖遺伝子ゲノムが遺伝子ごとに異なることが明らかとなった。 (3)パンコムギの栽培化に関わる遺伝子の発現機構の解析:パンコムギの栽培化に決定的に重要であったQ遺伝子の発現変異機構として、miRNAの関与について解析を行った。 (4)同祖遺伝子のゲノム別発現様式のバイオインフォマティクス的解析:113遺伝子についてそれぞれの同祖遺伝子の帰属染色体を決定した。3種類すべてのゲノムから発現している遺伝子は、7本の相同染色体に偏りなく存在していた。一方、2ゲノム、1ゲノムから発現している遺伝子は、Aゲノム由来の同祖遺伝子の発現が抑制される傾向がみられた。 (5)貯蔵タンパク質遺伝子座乗域のゲノム構造解析:全部で36のα/βグリアジン遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCR解析により、36遺伝子をパンコムギのA,B,Dゲノムにそれぞれ帰属させた。Dゲノム由来の遺伝子が優先的に発現していた。 (6)オリゴDNAマイクロアレイを用いた塩処理に応答する遺伝子の体系的解析:DNAマイクロアレイを用い、塩処理に応答するコムギ遺伝子を網羅的に解析した。塩に応答した遺伝子のなかから、転写因子を抽出し、イネと発現パターンを詳細に解析し、コムギ独自に反応する転写因子を見出した。これらの転写因子のうちから、NAC遺伝子の機能解析に取りかかった。
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