研究概要 |
我々の研究室で公開しているGTOPデータベースでは、タンパク質の構造ドメインを高性能ホモロジー検索により同定し、情報提供している。すでに我々は、タンパク質のドメイン構成(ドメインの組み合せ)に注目することにより、ゲノム情報から転写因子のみを同定する方法を開発した。この方法は原核生物の転写因子に対しては有効であり、真正細菌と古細菌がそれぞれ有する転写因子ファミリーの異同について比較ゲノム解析を行った。それと共に、原核生物と真核生物では転写因子にほとんど分子構造上の共通性がなく、両者には質的な違いがあることが示唆された。その一方、真核生物のタンパク質には構造をつくらない長大な不規則(disorder)領域をもつものが多いことが知られるようになった。本研究では、401種類のヒト転写因子に不規則領域予測を適用し、ドメインと不規則領域の関係を明らかにすることを目指した。予測プログラムを適用した結果、ヒト転写因子には予想以上に多く不規則領域が存在し、平均として全長の約半分(49%)に達することが判明した。多くの種類(ファミリー)の転写因子はDNA結合ドメインのみと長大な不規則領域からなること、また、不規則領域中には転写活性化部位などの重要な機能部位が含まれること、などを明らかにした。さらに、同じ予測プログラムを原核生物の転写因子に適用しても、不規則領域は事実上予測されない(全長の5%以下)ことから、真核生物と原核生物の転写因子は分子構成が質的に異なることがわかった。以上の結果は、論文にまとめて発表した(J.Mol.Biol. 359,1137-1149,2006)。
|